澤田政廣記念美術館 熱海エリア

熱海市の名誉市民でもある彫刻家・澤田政廣の代表作を集めた美術館。93歳でこの世を去るまで意欲的に創作した多くの木彫作品をはじめ、絵画や陶芸、版画、書などのコレクションを展示しています。美術館の収蔵作品はじつに6500点余り。毎年、さまざまなテーマの企画展が開催されています。

エントランスホールの頭上に飾られた、直径５メートルのステンドグラス作品「飛天」は、「この作品の下で手をつなぐと、いつまでも幸せになれる」といわれる人気スポット。熱海市の色であるスカイ・ブルーを含むブルー系のガラスやビーズを背景に、澤田政廣が生前に好んで描いたという4人の天女が楽しげに舞っています。この作品は、足元の赤御影石に映る姿も美しいのでお見逃しなく。館内に展示された木彫作品も、ノミの跡に目をこらしてみると、作者の息遣いが伝わってくるかのようです。

まるで壁一面に苔が生えたような展示室の壁面は、ナイロンパイルを静電気で植毛させたもの。光の具合によってその表情が変化する仕上げです。また、建物外観の苔むした岩肌のような施工法は、開発におよそ1年を費やしました。年月を重ね、屋根に用いた銅版の緑青が外観に流れ落ちることにより、古色蒼然とした佇まいを生み出しています。

熱海の海辺に育ち、
19歳で彫刻家を目指す

熱海の海辺に育った澤田政廣の本名は寅吉。彼の生家は幼年期に「亀屋」の屋号で廻船業を、少年期には製材業を営んでいました。1913年（大正2年）に19歳で彫刻家を志し、高村光雲の高弟・山本瑞雲に師事。同年、東京美術学校彫刻別科に入学し、朝倉文夫にも学びました。1974年に熱海市名誉市民となり、1979年には文化勲章を受章しています。